呼びかけ文
全ての医師・医療従事者、そして国民へ呼びかけます
〜医療崩壊から医療再生へ〜
日本は戦後目覚しい経済発展を遂げ、先進国の仲間入りを果たしましたが、
近年「医療崩壊」が進行し、国民皆保険導入以降、医療人と国民が築いてき
た「全ての国民が必要な医療を受けられる」という医療環境が破綻する危機
を迎えています。
今日の医療崩壊の第一の原因は1980年代から進められてきた医療費抑制
政策で、この間政府は医療費の増加は国を滅ぼすとの見解から、公的医療費
の抑制を進めてきました。その結果、現在G7と呼ばれる先進国の中で、日
本の医療費比率(対GDP比)は常に最低となっています。
医療の高度化と高齢化に伴う医療需要の増加の中で、医療の質を保つため
には、医療従事者の増員が必要ですが、人口当たり医師数はWHO加盟国で
63位、100ベッド当たりの病院従事者数はOECD平均の三分の一と、いずれ
も国民の望む医療を支える体制となっていません。
地域医療を支える多くの医師は、少ない人員で過重労働を担い、体調を
崩し、過労死という犠牲者も現れています。さらに、24時間体制を担わざる
を得ない診療科では、過酷な診療体制のため、後継者を育てることさえ困難
で、持続不可能な悪循環に陥っています。
大学医学部では、貧困な文教予算と政策の結果、研究・教育・診療を一人
の医師が担ってきましたが、新研修制度移行後は、医師不足が深刻化し、高
度医療機関としての診療と医師養成機能を十分に果たせないばかりか、医学
研究を行う余裕も失われ、日本全体で医学研究論文数が減り続けています。
今後、団塊世代の高齢化の進行により患者数は増加し、医療崩壊と言われ
る現状がさらに悪化することは火を見るより明らかです。これは医療従事者
だけでなく、国民にとっても極めて深刻な事態で、一刻も早く解決しなけれ
ばなりません。
昨年の総選挙で公的医療費の増額を公約に掲げた新政権も、いまだ抜本的
な改革を行えず今日に至っており、危機はさらに深刻となっています。
「自分や家族の健康を守りたい」という願いは、国民の「生存権」にもか
かる基本的な要求で、私たち医師も、良質な医療を国民に提供し、そのため
にも医科学と診療技術の進歩を担いたいと心から願っています。医療崩壊を
押しとどめ、医療再生のためには、G7各国なみの医療費が不可欠で、公的
医療費と研究・教育費の抜本的な増額が必要です。政府は国民の願いを直視
し、迅速に公的医療費の財政上の優先順位を高めるべきです。
医療崩壊を招いた第二の原因は、私たち医療従事者自身にあります。私た
ち医療者は、目前の診療や研究に没頭するあまり、医師の非常識な勤務体系
を放置してきました。医療の専門家である私たちは、日本の医療の危機的な
状況を最もよく知る立場にありながら、国民にわかりやすく説明し、理解を
得る努力をしてきませんでした。自分たちが社会的責任を十分に果たしてこ
なかったことを、私たち医師は、重く受け止め反省しなければ、新しい前進
は望めません。
医療崩壊を阻止して再生へ、そのためにはまずは医療者が自身の社会的責
任を果たさなければなりません。そのためには全ての医師の自覚と協力が必
要です。それを実現するために、今日ここに医療再生フォーラム21を立ち上
げ、これまで協力が困難であった、勤務医と病院管理者・研究者に医療再生
へ向けた運動を提起することを呼びかけました。医師が力を合わせ、自ら行
動し国民に呼びかけることなしに、医療を再生する変革は起こりえません。
私たちの目的は、危機的な医療の現状と医療再生の道筋を示し、多くの国民
の同意を得ることにあります。私たちは、この一歩が、新しい医療再生の時代
を切り開く、大きなあゆみとなることを確信します。私たちは全ての医師に
呼びかけます。今こそ立ち上がり、医療再生に向かって行動しましょう。
2010年9月19日 医療再生フォーラム21

